
- 作者:Hamilton, James D.
- 発売日: 1994/01/11
- メディア: ハードカバー
- Time Series Analysis: ノート10章 弱定常ベクトル過程(その1) - クッキーの日記
- Time Series Analysis: ノート5章 最尤推定(その2) - クッキーの日記
- Time Series Analysis: ノート5章 最尤推定(その1) - クッキーの日記
- Time Series Analysis: ノート2章(その2) - クッキーの日記
- Time Series Analysis: ノート2章(その1) - クッキーの日記

結局前回は以下のことしかやっていませんね…。
- p 次ベクトル自己回帰過程 VAR(p) を導入してその定常条件を確認した。
- 定常 VAR(p) は Vector MA(∞) にかき直せる。
- 一般に定常ベクトル過程の自己共分散行列
は
となる。

え、ここで Vector MA(q) を導入するんですか? 既に前回 Vector MA(∞) がフライングで出てきていましたが…まあいいです、試しに Vector MA(2) の自己共分散行列を計算してみましょう。

まあそうなるよね。じゃあ Vector MA(∞) の自己共分散行列はどうなる? ただし係数行列 は絶対総和可能とするよ(前回明示的に「成分ごとに絶対総和可能」とかいたけど、以降テキストの表記にならって「成分ごとに」を省くよ)。ちなみに単変量の MA(∞) は係数が絶対総和可能であるという条件の下で定常過程だったね(52ページ)。


は有限の値をもつよ。もっというと絶対総和可能になる。証明は Appendix にあるけど、いきなり
の
成分
が有限であることを考えるのはややこしいから、まず以下の2つの積の期待値を考えよう。あ、以下
とするよ(部長がかき下した自己共分散行列もこう定義すればもっとすっきりする)。
:
の第
成分の、ノイズの第
成分に依存する項。
:
の第
成分の、ノイズの第
成分に依存する項。




あっ…いやでも、それをいうには定常 VAR(p) が「係数行列が絶対総和可能な」Vector MA(∞) にかき直せることを示さなければ。

示せるよ。前回 VAR(p) の定常条件を示すのに、1次の差分方程式 に持ち込んで
を対角化
したけど、VAR(p) の Vector MA(∞) 表現における係数行列はこの
の
乗の左上
ブロックだったでしょ?
の任意の成分は263ページの一番下の式の形にかけるから(テキストでは
じゃなく
になっているけど)、これの
についての和は収束するよね。



どうやってって…そもそも単変量の AR(p) のときはどうしましたっけ。あ、AR(1) の場合は以下の記事で求めていました。
定義式
まあその方向でいいんだけどね。まず 0 次の自己共分散行列がどうなるか具体的にやってみよう。項が p 個あると面倒だから式 (10.1.11) の1次の差分方程式形 でやってみよう。これの共分散
を取るとどうなるだろう?

簡単です。 なので、
と整理して、
について解けば…あれ、陽に解けない? 右から
をかけても左から
をかけても
という行列をかきあらわせませんね…。


となるわけですか。
が正則でないと困りますが、定常 VAR(p) であれば必ず正則になるんですね…証明は面倒なのでしませんが。
では 1 次の自己共分散行列はというと、 ですから、0 次の自己共分散行列に左から
をかけるだけですか。