Time Series Analysis: ノート2章(その2)

以下の本を読みます。キャラクターは架空のものです。解釈の誤りは筆者に帰属します。お気付きの点がありましたらコメントでご指摘いただけますと幸いです。

Time Series Analysis

Time Series Analysis

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前回はテキストの2.1節~2.3節の途中まで読んだのですが、どんな話だったかというと…というか、きちんと読んでいないんですがそもそも1章ではまず線形差分方程式で表される系列の性質を調べたのですよね? 例えば2次の差分方程式だったら (1.2.13) 式の解  \lambda_1, \lambda_2 が重要な意味をもつはずです。つまり、これらのいずれか一方でも絶対値が1より大きければ、ある時刻の w_t がそれより未来のある時刻の y_{t+j} に与える影響(=ダイナミックマルチプライヤ)が、j \to \infty で発散(振動)します。どちらも絶対値が1より小さければ収束します。なので、系列が bounded であってくれるためには  \lambda_1, \lambda_2 の絶対値は1未満でないと困るわけです。

他方、2章ではラグオペレータ L なるものを導入しました。この L を系列にくっつけるとすべての時刻の要素が1ステップずつ未来に引っ張り出された新しい系列ができるとでもいうのでしょうか、そんなものです。くっつけられた系列さんにしてみれば1ステップ未来に引っ張りだされますが、くっつける私たちからみれば対象の系列の1ステップ過去を覗いているわけです。だから何なのかというと、2次の差分方程式は2ステップまで過去の自分を参照しますが、ラグオペレータをつかうと過去の自分を参照しない形で表現できます(系列が bounded であるという仮定の下でですが、 1 - \lambda L の逆オペレータが定義できるので)。そうするとまた先ほどの  \lambda_1, \lambda_2 に出くわします。ここでもまた  \lambda_1, \lambda_2 の絶対値は1未満でないと困るということにたどりつきます。

…1章も2章も内容としては、「系列が bounded であってくれるためには、系列を生み出すモデルはこうあってほしい」というのをそれぞれ別の側面から取り扱っているのではないかと思うのですが…確かに、時系列に対するモデルには、ふつう「前の時刻がこうだったら次の時刻はこうする」というのを入れるわけですから、下手なことをするとすぐ発散(振動)してしまう恐れがあります。分析対象の時系列を適切にプレ処理して bounded なモデルを当てる必要があるといいたいのでしょうか…?

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2章にはそれに加えて最後の2.5節に株価 P_t と配当 D_t の具体例が挙げられているみたいだけど。というかこれ株式評価の配当割引モデルだな…。

2次の差分方程式を例にして、1章のアプローチをまとめておくと、

  •  y_t = \phi_1 y_{t-1} + \phi_2 y_{t-2} + w_t で表される系列の性質を知りたい。
  • 2次の差分だと逐次的に扱うことができないので、1次の差分にする(以下)。
     \left( \begin{array}{c} y_t \\ y_{t-1} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cc} \phi_1 & \phi_2 \\ 1 & 0 \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} y_{t-1} \\ y_{t-2} \end{array} \right) + \left( \begin{array}{c} w_t \\ 0 \end{array} \right)
  • ある時刻の w_ty_{t+j} \; (j > 0) に与える影響を知るには、以下の行列 Fj 乗の (1,1) 成分をとればよい( ∵ \tau < ty_{\tau}=0 だったとすると、y_t = w_t であり、(y_{t+1}, y_t)^\top = F (w_t, 0)^\top であり、(y_{t+j}, y_{t+j-1})^\top = F^j (w_t, 0)^\top である)。
     F = \left( \begin{array}{cc} \phi_1 & \phi_2 \\ 1 & 0 \end{array} \right)
  • 行列を累乗するには対角化するのが常套手段である。F=T \Lambda T^{-1} として \Lambda を対角行列にするには、以下の方程式の解を \Lambda の対角要素とすればよい。
     \lambda^2 - \phi_1 \lambda - \phi_2 = 0
    ステップが進むと対角要素は何回でも掛け合わされていくので、この方程式の解の絶対値が1を超えると系列は bounded にならないことがわかる。

対して2章のアプローチは、

  •  y_t = \phi_1 y_{t-1} + \phi_2 y_{t-2} + w_t で表される系列の性質を知りたい。
  • これだと y_t について解けないので、ラグオペレータ L というものを導入してみる(以下)。
     (1 - \phi_1 L - \phi_2 L^2) y_t = w_t
  • ラグオペレータは  1 - \lambda L の形にすると逆オペレータ  (1 - \lambda L)^{-1} = 1 + \lambda L + \lambda^2 L^2 + \cdots が存在する。ので、上の式を以下の形にしたい。
     (1 - \lambda_1 L)(1 - \lambda_2 L) y_t = w_t
     \Rightarrow y_t = (1 - \lambda_1 L)^{-1}(1 - \lambda_2 L)^{-1}w_t
  •  (1 - \phi_1 L - \phi_2 L^2) = (1 - \lambda_1 L)(1 - \lambda_2 L) が成り立つためには、係数比較より、 \lambda_1 + \lambda_2 = \phi_1 \lambda_1 \lambda_2 = -\phi_2 が成り立たなければならないが、2次方程式の解と係数の関係より、\lambda_1, \lambda_2 は以下の方程式の解に他ならない。
     \lambda^2 - \phi_1 \lambda - \phi_2 = 0
    この方程式の解は何回でも掛け合わされていくので(逆オペレータの定義)、この方程式の解の絶対値が1を超えると系列は bounded にならないことがわかる。

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前回の続きの2.4節は一般のp次の差分方程式の場合ですね。

 y_t = \phi_1 y_{t-1} + \phi_2 y_{t-2}+ \cdots + \phi_p y_{t-p} + w_t
 (1 - \phi_1 L - \phi_2 L^2 + \cdots + \phi_p L^{p}) y_t = w_t
これを以下のように因数分解したいわけです。
 (1 - \lambda_1 L)(1 - \lambda_2 L) \cdots (1 - \lambda_p L)y_t = w_t
が、この \lambda_1, \lambda_2, \cdots, \lambda_p を求めるのは式 (1.2.3) の行列 F固有値を求めることと同じというように Proposition 2.2 にありますが…?

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解と係数の関係から  \lambda_1, \cdots, \lambda_p が Proposition 1.1 の (1.2.16) 式の解になることを示して、かつ、行列 F固有値(1.2.16) 式の解になることを示せばいいんじゃないかな。帰納法で示せるんじゃないのかな。

あとで追記