以下の本を読みます。キャラクターは架空のものです。解釈の誤りは筆者に帰属します。お気付きの点がありましたらコメントでご指摘いただけますと幸いです。
- 作者:Hamilton, James D.
- 発売日: 1994/01/11
- メディア: ハードカバー
2章のタイトルは「ラグオペレータ」というのでしょうか。まず「オペレータ」とは時系列(たち)を受け取って新しい時系列を出力するものみたいですね。「時系列0を 倍する」とか「時系列0と時系列1を足す」とかがその例のようです。いわば「掛け算オペレータ」と「足し算オペレータ」ですね。これらのオペレータについては「入力された時系列の時刻 の値をつかって新しい時系列の時刻 の値をつくる」ということしかしないので、「時系列0と時系列1をそれぞれ 倍してから足す」ということをしても「時系列0と時系列1を足してから 倍する」ということをしても結果は同じということです。
時系列が値を取る空間で分配法則が成り立っていればそれはそうなるね。
まあただ本当に利用したいのは「ラグオペレータ」なわけです。ラグオペレータ は ということをするオペレータです。日本語でいうなら「入力された時系列の時刻 の値をそのまま新しい時系列の時刻 の値にする」ですね。入力された時系列のインデックスを1ステップ遅らせるからラグというのでしょうか。入力された時系列の1ステップ昔を覗くメガネということもできそうです。
それで、ラグオペレータは掛け算オペレータや足し算オペレータと交換するということです。つまり、
- 時系列0を 倍してからインデックスに1を足す。
- 時系列0のインデックスに1を足してから 倍する。
- 時系列0と時系列1を足してからインデックスに1を足す。
- 時系列0と時系列1それぞれインデックスに1を足してから両者を足す。
そんなわけないかな。例えば各インデックスが日付だったとして、「月曜日の値だけ2倍する」というオペレータがありうるけど、これはラグオペレータと交換しないよ。「月曜日の値だけ2倍する」オペレータを先に作用させると元の時系列の月曜日の値が2倍されてから火曜日にずらされるけど、先にラグオペレータを作用させると元の時系列の日曜日の値が月曜日にずらされてから2倍されるからね。
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ぬ…。まあそれで、ラグオペレータをつかうと のような差分方程式が とかけるとのことです。さらに移項することによって となると。それはまあそうですが…それで、この両辺に以下をかける?
やりたいことは、 を、 に何をしたものかで表すんじゃなく、一番最初の に何をしたものかで表すことだね。そうするには の左辺を にすればいい( は適切な係数)。 にラグオペレータを 回かければ に巻き戻せるからね。以下の因数分解の公式を思い出すと、
いや、後者の説明の仕方のほうがだいぶ面倒ではないですか? 「前のステップの値 の 倍に を足したものです」の方が簡潔ですよね? 唐突に 式を持ち出してきた意義がよくわかりません。
前者が簡潔にみえるのはこの差分方程式が前者が簡潔になるものだからかな。それに、 という時系列 の性質を調べるのに、 というオペレータの逆数のようなオペレータがあったら便利そうだよね。…もし で が有限の値だったら、 で だから、大きな で以下の1行目が成り立つ。ということは、大きな で以下の2行目も成り立つ。
うーん…逐次的に の実現値を求めたいとかではなくて の定常分布を知りたいとかならその 式が便利かもしれないですね。しかし、 が bounded とか定常とかでなかったら駄目なんですか? だって、その式の両辺に をかければ になるので 式はいつでも正しいのではないですか?
式が 式を満たすのはいつでも正しいよ。その逆が真じゃない。 式の右辺に ( は任意の定数)を足したものだって を満たすからね。だから一般には というオペレータが定まってない。でも、 が bounded とか定常という条件が課されていればこの の項は でないといけない。でないと、 なら にしたときこの項(の絶対値)は発散しちゃうから、という説明だけど…結構違和感あるな…オペレータ を定義したときに の側の極限の議論なんてしてないし… という要請は で発散してしまうからではなくて単に初期条件としてそうすべきって話じゃないのかな…。
結局 の絶対値が1より小さいとき時系列は定常になるんだよね。1章と2章はAR過程が定常になる条件を異なるアプローチで求めてるんじゃないかな。1章では「繰り返し掛け算するのはどんな行列だろう?」って発想で、 はその行列の固有値って形で出てきた。繰り返し掛け算する行列の固有値の絶対値が1より小さくないと任意の時刻の平均が等しくはならないよね。発散か振動していって平均が移動していっちゃうから。他方、2章では「ノイズ()の式で表すとどうなるだろう?」って発想で、ノイズの係数として が出てきたのかな。これも絶対値が1より小さくないといずれ発散か振動して困る。2章の発想はAR過程をMA(∞)過程でかき直したともいうかな。
急にめちゃくちゃ沖本本参照しないでください…。