以下の本の5章を読みます。キャラクターは架空のものです。私の誤りは私に帰属します。お気付きの点がありましたらコメントでご指摘いただけますと幸いです。

- 作者:Hamilton, James D.
- 発売日: 1994/01/11
- メディア: ハードカバー

前回の復習ですが、ノイズが正規ホワイトノイズであるような定常 AR(1) 過程 の実現値
の同時分布は以下になりました。この分布は「最初に出てくる
はどんな分布だろう」「
を観測した上で次の
はどんな分布だろう」 と積み上げていけば導くことができます。
定常ガウシアン AR(1) 過程の実現値の同時分布
119~122ページでは上の同時分布を求める別解として、「 はどんな多変量正規分布にしたがうだろうか?」というアプローチで同じ同時分布を導きました。
122~123ページでは「 が所与」という考えやすい場合で実際に最尤推定値を求めますが、前回は流してしまったので改めて追ってみます。
が所与なら上の同時分布は以下のように化けますね。
定常ガウシアン AR(1) 過程の実現値の同時分布( が所与の場合)
が所与の定常ガウシアン AR(1) 過程の最尤推定値


あっと、最小2乗推定と等価ということはわかりました。しかし、なら最初から最小2乗推定を紹介していただければよかったのではありませんか? 定常性とガウス性を仮定して頑張って尤度関数を求めて、「実は単に最小2乗推定するのと同じだったんだけどね」では私が報われなくありませんか?


な、なるほど…? それで、123ページからは AR(p) 過程の場合ですね。AR(p) 過程の同時分布は…
- まず「最初の
点
はどんな多変量正規分布にしたがうだろうか?」を考えた上で、
- その後「
を観測した上で次の
はどんな分布だろう」を積み上げていっています。

…5.3.8 式に AR(2) の場合が具体的に書き下してあるから、AR(2) で求めて検算してみればいいんじゃないかな…と思ったけど、素朴にはできない気がするかな。まず、何も観測していない下での最初の1点の分布 は AR(1) のときと一緒だよね。期待値と分散は AR(2) のそれにしなければならないけど。あと、直近の
点
を観測した下での
の分布
も AR(1) のときと同じ要領だね。


この変換は というパラメータを与えて用いるんですね。どのように決定すればいいんでしょうか。

無論ガウス分布に近くなるように決めるんだけど、scipy.stats.boxcox は を与えなければ勝手に決めてくれるって。

文明の利器…127ページの一番上には非ガウスの場合の ARMA 過程の推定に関する研究が紹介されていますね。この本自体が17年前の本なのでそれを考慮して参考にしなければなりませんが…。5.4~5.6節は MA 過程、ARMA 過程の話ですが一旦とばします。5.6 節の最後には、ガウシアン ARMA 過程を最尤推定するのに最もシンプルなアプローチはカルマンフィルタであるとありますね。また、他の参考文献も紹介されています。
それで、尤度 を出す式が特定できた下で、それを最大化する
を如何に求めるかという話が残っていますが(
が所与の場合の最小2乗法はやりましたが)、5.7 節は数値的に最大化する方法ですね。紹介されているのは以下でしょうか。
- グリッドサーチ
- 最急降下法
- Newton-Raphson 法
- Davidon-Fletcher-Powell 法(準 Newton 法)