参考文献
「1の分割」というものがあるらしいんですが…。
導入が雑すぎる…。
そういわれても…じゃあ真面目に説明しますね。
ベイズ統計の理論と方法の4章では、真の分布 と確率モデル の関係に(「相対的に有限な分散をもつ」ということ以外は)何も仮定がない場合を扱うんですが、平均誤差関数を標準形にするために、パラメータを適当な多様体上の局所座標に変換してしまうみたいなんです。こうして得た「パラメータ改」が の有限和でかけるものとしてよいとするのに、「1の分割」なるものが存在するという定理を利用するようなんですが(厳密には「1の分割」そのものではなく同様の手続きということなんですが)…。
…という導入であればモチベーションがわかりやすいでしょうか?
わかりやすくはない…。
どうしろと…。
ともかく、定理の主張はつかめたの?
はい。調べたのですが、「1の分割」というのはある位相空間に対して指定の条件を満たす関数族(関数の集合)のことのようですね。
を位相空間とする. を であるような連続関数の集合とする. が任意の について以下の2つの条件を満たすとき, を の1の分割という.
- を元として含むある開集合 が存在して, から任意の で になる元を除くと,有限集合になる( のうち 内のどこかで より大きい値をとるようなものは有限個である).
- である.
いや、いうほど混ざってもないしルー大柴は「局所有限開被覆」とかいわないと思う…。そもそも英語版を参照すればいいんじゃ…でも、この証明は別の補題を利用していて追いかけづらいのかな。難しかったらいきなりパラコンパクトハウスドルフ空間における証明を目指すんじゃなくて、証明しやすい場合で証明すればいいんじゃない? 以下の本の186ページに、まずコンパクトな微分可能多様体における「1の"2"分割」の存在の証明があるよ。その後190ページにσコンパクトな微分可能多様体の任意の開被覆の細分に対する1の分割の存在の証明、198ページにはσコンパクトな微分可能多様体の任意の有限開被覆に従属する1の分割の存在の証明があるね。
- 作者: 松本幸夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1988/09/25
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私は地理選択ではないので地図帳はもっていませんね。
なるほど…でも、その点で開被覆 が重なっているような点だと、 ページと ページに異なる住所がかいてあるようなことになりませんか?
あるページにおける住所表示から別のページにおける住所表示への変換が滑らかなら 級多様体ということでしょうか。確かに、地図帳のあるページにあった公園が、別のページでは2つに引き裂かれていたら嫌かもしれないですね。そういうことがない地図帳ということですね。
「コンパクト性」ですか…よくわかりませんね。だから何といった感じなんですが。1の分割をするのになぜそんな性質が必要なんです?
はあ…ん? 副部長、誤植がありますよ。 じゃなくて です。
それは で合ってるよ。 で、日本語でいうとサポートとか台だね。関数の値がゼロでない点の集合の閉包のことだよ。てか じゃ意味通んないでしょ。
なるほど。しかし、「このような関数たちが存在する」ということの証明はどうやるのでしょう? やり方が思い付きません…。
実際に構成できるんだよ。上の定理の証明の流れはこうだね。
- のコンパクト部分集合 であって かつ となるものが存在する(これにコンパクト性が必要)。
- の任意の点とその開近傍 に対して、次のような 級関数 が存在する; に包含されるある開近傍の閉包 内では1をとり、 では0以上1未満の値をとり、 では0をとる(証明は、 を実際につくることによる)。
- 1. の の各点 に対して、 に 2. を適用すると をとれる。また、 はコンパクトなので有限個の で覆うことができる。この有限個に対応する を足し上げたものを とする。1. の に対しても同様に を得る。 が題意を満たす。
流れだけかかれても…。
証明かくのしんどいからね。