
を独立に同一の分布にしたがう確率変数たちとします(面倒なので真の分布の平均は
とし、分散は
とします)。「
の和を
で割ったもの」もまた確率変数ですが、その特性関数
がどうなるか考えると、

導入長いよ! ウィキペディアのまんまだし!!

これなんですが、どうにもこの結論に向かわされている感じがしませんか?

どこが?

まず、独立に同一の分布にしたがう の和を「
で割った」ものから出発したところです。唐突ではないですか?
の和のままでいくか、
で割る(標本平均)ならわかりますよ?
というのはいかにも中途半端ですよね?


ぬ。では、標本平均から出発したらどうなります?

標本平均の特性関数を と定義するならこうかな?


…まず、このシチュエーションでは 次以上の項を残すことはできないよ。
の和の特性関数は
の形をしていることは確定している。これの
に
を代入する形で
で
でない収束先に収束させようとするなら、
次以上の項は
次の項に比べて相対的に消えてしまう。分散
が有限なら必ずそうなる。

なるほど、特性関数の 次以上の項は
で消えざるをえなかったんですね。それなら確かに恣意的に正規分布にしたというわけではなさそうですね。

いやでも、もし「氷が摂氏0度で凍るのはなぜ?」と近所の小学生に訊かれたとして、彼/彼女は「なぜぴったり摂氏0度なのか」ではなく「なぜ水は相転移現象を示すのか」に興味があるのかもしれません。

知らないよ…なんでそっち掘り下げたの…。

中心極限定理の話をまとめましょう。面倒なので、「独立に同一の分布にしたがう確率変数たちの和」から出発しましょう。
- 独立に同一の分布にしたがう確率変数たちの和の特性関数
は、元の確率変数の特性関数
の
乗の形になります。これは、特性関数の定義が
の期待値であり、
に
を代入すれば
の積の形になるからですね。
- この「何かの
乗」の形をもつ特性関数が
で何かありがたい極限をもつためには、ネイピア数の定義の形に持ち込まなければなりません。つまり、
乗される中身を、「1 +『
倍して
としたら(常には0でない値に)収束する項』」にしなければなりません。
- 元の分布の形
は動かせませんから、これに代入する変数を少々工夫してネイピア数の定義の形に持ち込むよりありません。つまり、
に
を代入することになります。
- これは最初に考えた「確率変数たちの和」を
倍することに相当します。
に
などを代入したら特性関数の極限は恒等的に1になってデルタ関数に相当しますし、
などを代入したら特性関数は分散を無限に引き伸ばした正規分布のそれになりますが、いずれにせよそれらのようなぺちゃんこな分布はありがたくないわけです。「情報が増えるなら真実に近づく(分布は針になる)」と「情報を全て足していくなら分散はどこまでも広がる(分布は無限に広がる)」のバランスが取れるのが
倍なのだというところでしょう。
- そうすると、
の
次以上の項は
で相対的に消えてしまいます。元の確率変数の
次以上のモーメントの情報は
で生き残ることがかなわなかったわけです。
- そんなこんなで「確率変数たちの和の
倍」の特性関数の
の極限として
を得るわけですが、これがどのような分布かは特性関数を確率分布関数に反転すればよいですね。つまり、
です。