後半文字だらけで見づらいですが、この分野を知らない人にもわかるようにどのような仮定を置いているかをきちんと書こうとしています。それで肝心の二項ツリーの説明までたどり着けていないんですが、二項ツリーで置いている仮定は既に説明している「無裁定条件」「無リスク金利で貸し借りができる相手の存在」に加えて、
- 時間 だけ先に株価は今より 倍に上がるか 倍に下がるかの2択とする(から二項ツリーになるのですが)。
- とする。
- の1次以上の項は無視できるとする。
辺りになると思います。そうなると株価のボラティリティ と矛盾しないように と が決まります。このとき二項ツリーによるオプション価格の求め方は以下の手順になります。
- 満期日までの時間をじゅうぶん細かい ずつに区切る。
- ツリーの根元のノードに現在の株価 を記入し、 倍や 倍しながら末端のノードまで株価を埋める。
- 次に、株価の下にオプション価格を書いていく。ツリーの末端のノードについては容易に埋まる(例えばコール・オプションであれば行使価格 として を書き入れるだけ)。
- 末端ではないノードのオプション価格については以下の手順で書き入れる。
この要領で一番根元まで戻ってこれれば現在時点でのオプション価格が求まります。気分転換で数理ファイナンスの記事を書いてみましたが、次以降は統計や機械学習の記事を書きたいです。
それで、どのような仮定を置いているかをきちんとしたいと書いたのですが、少し前に twitter で話題になっていた(少し前というより定期的に話題になっているようですが)以下の確率の問題は仮定が足りない例です(文章は意訳です)。
- Aさんに質問する前の子どもの性別の組合せの事前分布を 男男男女女男女女 とする。
- 「もう1人」とは、女の子が少なくとも1人いると判明した後に、女の子を1人選び、残ったもう1人のこととする。
の2つになります。この問題でよく「こう解釈できるのでは?」争点になっているのは後者ですが、自分がどう解釈したかによって「このように仮定する」とすれば大丈夫です。それより前者について、「男女が生まれる確率が同じとする」のように表現しようとする回答が見受けられますが、その表現は以下の可能性を否定しないので同値ではないです。「独立な」とまでいうと1つ目の可能性のみ排除できますが、2~4つ目の可能性は残るのでやはり不十分です。
- 第1子と第2子の性別に相関がある可能性。
- 子どもが男でも女でもない性別である可能性。
- 子どもの性別が出生後に変化する可能性。
- Aさんに質問する前からAさんの子どもの性別の情報を(部分的に)知っている可能性。
この問題を「1/2 と 1/3 の2通りの解釈がある」と結論付ける回答もあるのですが、2通りどころか、仮定によって 0~1 のどの値にもなります。それどころか、Aさんの2人の子どもの性別の組合せの確率分布について事前に本当に全く何もわからないという立場を取るならば、1人が女の子だとわかったところでもう1人については「やはり何もわからない」という回答もあると思います。だから何なのかというと、「男女の出生率は等しく第n子にかかわらず独立」というのは、数理ファイナンスにおける「裁定機会は存在しない」「無リスク金利で貸し借りができる」などと似ていて、それなりには現実に近く、いつの間にかそれが当然のように受け入れがちな仮定なのですが(?)、厳密には成り立たないので、いつ仮定が利用されたかを把握していないと危ういんじゃないかな(まあ男女の出生率やその相関を厳密に考える場面などたぶん訪れないんですけど)という回りくどい話でした。