数学ガールのシリーズ3作目に「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」がある。
帯の「数学って、不完全だったの?」というコピーがいい。
このシリーズ5作は以前読んだけど、理解していない箇所も多いので読み返したい。それでのっけから引っかかったのでメモ。
"ゲーデル篇" の2章には僕、テトラちゃん、ミルカさんがペアノの公理―"自然数の定義"―を読み解くシーンがある。
帯の「数学って、不完全だったの?」というコピーがいい。
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"ゲーデル篇" の2章には僕、テトラちゃん、ミルカさんがペアノの公理―"自然数の定義"―を読み解くシーンがある。
PA1
は
の元である。
PA2 任意の
に対して、"後続数"
は
の元である。
PA3 任意の
に対して、"後続数"
は
ではない。
PA4 任意の
に対して、
ならば
である。
PA5
に関する述語
について、
が成り立ち、かつ、任意の
に対して 
ならば、任意の
について
が成り立つ。
3人はこれらを上から順に検討し、それは以下のような描写になっている。
PA2 任意の
PA3 任意の
PA4 任意の
PA5
ならば、任意の
- PA1 で
の元に "1" を迎え入れる。
- PA2 で "1" の後続数、後続数の後続数、後続数の後続数の後続数、… を迎え入れる。
- PA3 で任意の後続数は "1" とは異なることを保証する。
- PA4 で連鎖は一本道であることを保証する(ミルカさん曰く、未知の
からの合流を防ぐ)。
ただ、PA5 は「すべての自然数について何かを主張するための仕組みとして、ペアノの公理に用意されている(45ページ)」という言及になっており、その後話題は数学的帰納法に移っているが、PA5 が の構造に与える制約は明示されていない。
これを補足すると、PA1~PA4 は、任意の が一本道の連鎖の上にあることを要請するが、連鎖が "1" からはじまる一系列しかないという制約は与えない。PA1~PA4 は「"0.1" からはじまる系列」や「無限の彼方から "0.01" にやってきて無限の彼方に去る系列」を排除しない。PA1~PA4 は1以上の整数が
の要素であることを保証し、0以下の整数が
の要素でないことを保証するが、整数でない全ての実数について
の要素であることを保証も否定もしていない。例えば
として「0以下の整数を除くすべての実数」も許容されるが、「でもこれは、自然数に期待する構造ではない(41ページ)」
これは PA5 があれば解決できる。以下の手順による。
- PA1~5 を満たす集合を1つとり、
とする。
- さらに、PA1~5 を満たす集合であって
であるような
をとる。
- すると、
について、PA5で「任意の
について
」が適用できるので、結局
に他ならない。
- つまり、PA1~5 を満たすような
で要素数が異なるものが存在するということはなく、要素数はすべて等しい。
なので、紙面の都合上カットされているけどこういう会話もあったのかもしれない。つづく(かも)。