前受収益とか

前受家賃を負債とするのはなぜか、が過去に質問サイトに寄せられている。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1121308461

これに対して、
「もし契約を解除されたら返さなければならないから。」
「サービスを提供する義務を負債として評価している。」
というような回答がされている。この質問の経緯は「前受家賃が負債であるのが感覚と合わない」ことらしいので、これらの回答で目的を満たすかもしれないが、もし自分が回答するのだったら、感覚と合わせようとすることを勧めないと思う (負債の「捉え方」自体に言及している回答もあるが、別の捉え方を提示しているので、これも少し違うと思う)。

前受家賃が負債である理由は、定義と手順に立ち戻れば、

  • [定義] 資本 (= 資産 - 負債) の増減が 収益 or 費用 である。
  • いま、今年度に発生した家賃収入という収益を、今年度と来年度にわたって発生したことにしたいとする。
    • [手順1] すでに現実に発生した今年度の収益 (=資本の増加) の一部をなかったことにするために、今年度に「ニセ負債」を計上する。この「ニセ負債」は本物の負債ではないので、後で必ず「ニセ資産」で打ち消す必要がある。
    • [手順2] 翌年度にその「ニセ資産」を計上し、収益を取り出す。

経過勘定の他の全てのパターンにも応用できる。

  • すでに発生した収益を将来と分け合う場合 (前受収益) … 負債
  • まだ発生していない収益を現在と分け合う場合 (未収収益) … 資産
  • すでに発生した費用を将来と分け合う場合 (前払費用) … 資産
  • まだ発生していない費用を現在と分け合う場合 (未払費用) … 負債

重要なのは、フローである収益や費用を、一時的にストックである資産や負債に翻訳し、年度をまたがせるという点である。ここでの資産や負債は手段にすぎない。

  • 「ニセ負債」は将来に「ニセ資産」を送ることで収益を将来へ繰り越す手段。
  • 「ニセ資産」は将来に「ニセ負債」を送ることで収益を現在に先取りする手段。
  • 「ニセ資産」は将来に「ニセ負債」を送ることで費用を将来へ繰り越す手段。
  • 「ニセ負債」は将来に「ニセ資産」を送ることで費用を現在へ先取りする手段。

最初の質問者は手順を理解した上で、「銀行からの借入金等と同様負債に連ねるのはなぜか」を疑問に感じていたのかもしれないが、「単なる会計的手段であって、本物の資産や負債とは意味が違う」という方が会計の理解上適切ではないかと思う。