CMA2次試験ノート(H26午後)

過去問メモ。カッコ内のサブタイトルは適当。
H27午前: CMA2次試験ノート(H27午前)
H27午後: CMA2次試験ノート(H27午後)
H26午前: CMA2次試験ノート(H26午前)
H26午後: CMA2次試験ノート(H26午後)
H25午前: CMA2次試験ノート(H25午前)
H25午後: CMA2次試験ノート(H25午後)

第1問(国際収支と貯蓄投資差額)
  • グラフに国際収支のいくつかの項目がプロットされているが、どれがどれかという問題。
    • 国際収支の項目: 用語の解説 : 財務省
    • 出典と照らし合わせればわかる(下図)。
      • 出典: 国際収支の推移 : 財務省
      • 下図は上記データを元に作成。ただし、資本収支は「外貨準備 - 経常収支 - 誤差脱漏」で算出。
    • 本番のテストでは照らし合わせるわけにいかないので、識別ポイントをメモしておくと、
      • 貿易収支: 2008年に大幅減、2011年にマイナスに転じた。2008年初の穀物・原油価格高騰と、震災後の原料輸入増、電子機器輸入増、円高が赤字傾向を助長した。最近原油安で改善がみられる。
      • 所得収支: 安定的な増加傾向を示す。海外移転による海外での収入増と2013年以降円安の影響も。
      • 経常収支: だいたい貿易収支、所得収支の和であることからわかる(負であるサービス収支も足し、官民の無償協力を差し引く必要はあるのでこれらの和よりもう少し小さくなる)。
      • 資本収支: だいたい経常収支をX軸に反転させた形なのでわかる(外貨準備を足す必要はある)。日本は外貨準備を積み上げ続けているので、資本収支は経常収支をX軸に反転させたよりは大きい。

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経常収支貿易・サービス収支貿易収支輸出モノの輸出入の収支。輸出額の方が多いとプラス。
輸入
サービス収支サービス取引の収支。
海外旅行でホテルに泊まったらサービスの輸入でマイナス。
第一次所得収支(旧 所得収支)対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支。
海外から雇用者報酬や配当や債券利子を受け取ったらプラス。
第二次所得収支(旧 経常移転収支)官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等。
無償で食料を輸出したとき、貿易収支にプラスを付けると同時に
ここにマイナスを付ける。
資本移転等収支外国に対する債務免除や、外国への無償援助。
金融収支直接投資、証券投資、
金融派生商品、その他投資
株や債券や金融派生商品の収支。
「その他投資」には上記に該当しない全ての資産取引を計上。
外貨準備政府が保有する対外資産が増えたらプラス。
誤差脱漏 

  • 2011~2013年の輸出入総額について、量/価格に分けて論ぜよという問題。
    • 輸出量は減少傾向: 震災の影響のほか、リーマンショック以降の円高傾向、欧州や中国経済の悪化が背景にある。2013年以降は円安に転じたが、海外移転が進んでいたため輸出を伸ばせなかった。
    • 輸出価格は横ばいのち上昇: 2013年以降の円安が輸出価格上昇に貢献している。
    • 輸入量は増加傾向: 震災後の燃料輸入量増加のほか、円高の影響、海外製品台頭の影響がある。
    • 輸入価格は急激に上昇: 燃料価格の高騰と円安の影響。
  • 貯蓄投資バランスについて: 貯蓄投資バランス - Wikipedia
    • 貯蓄投資バランス:
      • 生産された価値の行方: (総生産)=(消費)+(投資)+(政府支出)+(輸出)-(輸入)
      • ⇒ (総生産)-(租税)-(消費)+(租税)-(政府支出)-(投資)=(輸出)-(輸入)
      • ⇒ (民間貯蓄)+(政府貯蓄)-(投資)=(経常収支)
      • ⇒ (貯蓄)-(投資)=(経常収支)≡(貯蓄投資バランス)
      • 政府部門、企業部門、家計部門の貯蓄投資バランスがある。
    • 「株高に伴い国内の個人消費が増える(その他の状況に変化はない)」ってどういうこと?商品への魅力が高まって、家計の収入は増えないけど消費性向が高まるということ?
第2問(日本の金融政策)
第3問(株式ポートフォリオ戦略)
  • 株式ポートフォリオ戦略で採用するベンチマークが満たすべき主な要件:
    • ポートフォリオ構築のルールが明確であらかじめ開示されていること。
    • リターン計算のルールが明確であること。
    • 構成銘柄が売買できること。
    • 価格付けのルールが明確で価格情報が公開されていること。また、価格は取引可能価格であること。
    • リターンや価格情報は遅延なく公開されること。
    • じゅうぶんな過去のデータが利用できること。
  • 投資ユニバースを限定する場合:
    • 流動性が低い、情報入手しにくい、デフォルト確率が高い、スポンサーの要請など。
  • マーケット・インパクト:
    • 発注数量が大きいときに、全ての数量を最もよい価格で取引できないこと。
    • マーケット・インパクトとタイミング・コストのトレードオフとは、最もよい値段のときに全ての数量を取引したいが、マーケット・インパクトを考えるとタイミングをずらして少しずつ取引する必要がある。このトレードオフのこと。
    • この場合のTOPIX先物の利用とは、このファンドより流動性の高いTOPIX先物でポジションをとって先にトラッキング・エラーを抑制し、その後現物を分割執行して少しずつ先物のポジションを解消すること。
      テキストの該当箇所がよくわからないが、こうしておくとうれしい理由は、現物買いするときにタイミングが遅れて価格が上昇してしまっても、手元のTOPIX先物ロングもそれなりに値上がりしているから平気、ということか。
  • アクティブ運用の銘柄選択のアプローチ:

トップダウン・アプローチボトムアップ・アプローチ
概要まずマクロ分析を行って経済見通しを立てる。
それをもとに業種別にシナリオをつくる。
その下で個別企業の収益動向をみる。
まず個別企業の収益動向を精査する。
それをもとに業種別の先行きを出す。
それをもとに市場動向を把握する。
銘柄
選択
手順
策定した将来動向のシナリオに基づき
業種別のオーバー/アンダーウェイトを出す。
その後組入銘柄を選択する。
個別企業の将来の動向を分析し
高いアルファが期待できる銘柄で
ポートフォリオ構築する。
問題点シナリオに沿うことが優先されがちで、
優良な個別銘柄が見落とされる
(「森を見て木を見ず」)。
特定の業種にリスクが偏在する
(「木を見て森を見ず」)。
対策個別銘柄の分析を充実させる。どんなポートフォリオにしたいかの
ビジョンを策定する。

  • あるファンドの  \beta の推定値は 0.94 で、そのt値の推定値は 22.4 だった。95%信頼区間を求めよ。
    > 0.94 + qnorm(0.025)*(0.94/22.4)
    [1] 0.8577515
    > 0.94 + qnorm(0.975)*(0.94/22.4)
    [1] 1.022248
  • 情報比: アクティブ・リスク(トラッキング・エラー)1単位あたりのアクティブ・リターン。
      \displaystyle {\rm IR} \equiv \frac{E(r_A)}{\sqrt{{\rm Var}(r_A)}}
    • この値が大きいほどベンチマークを安定的にアウトパフォームすることが期待できる。
    • シャープ比に似ている。
第4問(デリバティブの理論価格)
  • 年1回変動金利LIBOR)を支払う期間2年の円変動利付債の現在価値は、額面100円あたり100円。
  • 問4の通貨スワップも、同様に米ドルのキャッシュフローの現在価値が100万ドルなので、現在価値が1億円に等しくなるように円固定金利を求める。
  • 1年LIBORが1年後に上昇するか下落するとき、二項ツリーのリスク中立確率 p
    • 「現時点で残存期間が2年の割引債」の1年後までの価格変化について式を立てる。1年後には「残存期間1年の割引債」になっているので、上昇後/下落後の1年LIBORをつかってこの価格を出す。つまり、以下を解けばよい。 97.64 \cdot 1.008 = 99.73p + 97.66(1-p)
    • 債券価格について式を立てなければならないことに注意(価格変化するのは債券)。
  • オプション価格:
    f:id:cookie-box:20160603185220p:plain:w320
第5問(個人投資家の投資政策)
  • 人的資本: 人間を機械設備等と同じ資本とみなす考え方であり、その人の労働所得の割引現在価値。年を取るとどんどん減る。
  • 人的資本と金融資産のライフサイクル仮説:
    • 人的資本が所得を稼ぐ時期に貯蓄し、引退後にそれを取り崩すという考え方。
    • 人的資本は残りの労働年数が長い若年時に大きく、年を取るにつれ減少する。金融資産は就業期間中の所得から貯蓄されるので若年時は小さく、定年退職まで増加する。退職後は生活費にあてるため減少する。
    • 人的資本を反映した資産配分の考え方:
      若年安全資産である人的資本が多く、投資にあてられる金融資産は少ない。
      リスク資産(株式など)にあてる。
      中高年金融資産の比率の増加に伴い、債券等の安全資産へシフトさせる。
      退職後人的資本の比率がなくなる。安全資産への配分をより高める。
    • 職業特性を反映した資産配分の考え方:
      • 職業変更の柔軟性が高いと、リスク資産への配分を高めるべき。
        これがよくわからない。テキストでも根拠がいまいちわからない。職業変更の柔軟性が高い人の人的資本は、より安全資産という考え方だったらわかる。また、50代であっても、その段階でまだ職業変更に柔軟性が効くような人だったら株に投資していいのはわかる。
      • 公務員や教員など、人的資源のリターンの変動が小さく、株式との相関が低い職業は、リスク資産への配分を高めるべき。
      • 個人事業主、ブローカー、投資銀行家、芸能人など、人的資本のリターンの変動性が高く、株式との相関も高い職業は、リスク資産への配分を低くするべき。
    • 生命保険は、人的資本の死亡リスクのヘッジといえる。金融資産が増加していくほどそのニーズは低くなるが、遺産選好が高い場合はその限りではない。
  • 確定拠出年金のデフォルト・ファンドに相応しいのは:
    • 加入者が運用商品を選択しない場合、運用内容を専門家が誘導した方がよい。米国ではMMFが一般的だったが、最近ではライフサイクル型のファンドが採用されつつある。日本では、元本保証型の商品がデフォルト型であったが、バランス型投資信託を採用する事例も増えている。
第6問(行動ファイナンス
  • 2013年いっぱいにわたってTOPIXは75%上昇したが、「なぜ株価の上昇が長期間継続したのか」「アベノミクスによる上昇が始まった2012年11月から数ヶ月間、多くの国内投資家は売越し、海外投資家は買越しであったのはなぜか」を解釈せよ。
    • 一番簡単な解釈である「アベノミクスを信頼する投資家の割合が徐々に増えていった」は例として既出。
      というか例の書き方が広い解釈をカバーしすぎで違う観点を考えるのが難しいんだけど。
    • 「自由に答えよ」なので多少雑でも以下自由に書くと: アベノミクスの「信頼性が徐々に高まっていった」のではなくて、アベノミクスを信じる人たちの資金の方が、アベノミクスを信じない人たちの資金より大きくなっていった。当初は拮抗していたが、ある時点から買いの方が優勢になった。そうすると、アベノミクスを信じる人たちの資金はますます大きくなり、アベノミクスを信じない人の資金は削られた。アベノミクスを信じない人は、撤退するか、信じる側にシフトした。アベノミクスを信じる人以外が淘汰されるまで、株価の上昇が継続した。
  • レジームスイッチのモデル(市場は「定常」か「変動」かどちらかにあるとし、どちらにあるかを毎期予想して投資する)に基づいて、「なぜ株価の上昇が長期間継続したのか」を解釈せよ。1つの行動パターンの投資家しかいないものとする(各投資家の現状に対する見方は異なってもよい)。
    • 現状を「変動(上昇)」レジームと見る投資家の割合が徐々に増えていき、ほとんどの投資家の見方が「変動(上昇)」レジームになるまで株価の上昇が続いた。
  • 世の中にニュースウォッチャー(自分で情報を集めて自分で判断する投資家)とトレンドウォッチャー(市場価格の動きをみて判断する投資家)がいるとする。
    • この考え方に基づくと、海外投資家はニュースウォッチャーで、国内投資家はトレンドウォッチャーであったと考えられる。買いに入るタイミングがずれたため、上昇トレンドは長く継続した。
第7問(投資パフォーマンスの評価)
  • B社株のシャープ比は、 (\mu - r_f)/\sigma より求まる。
  • B社株の非市場リスク  \sigma_e は、トータルリスクと市場リスクを用いて  \sigma_{\rm TOTAL}^2 = \beta^2 \sigma_M^2 + \sigma_e^2 より求まる。
  • 投資ファンドであるB社株のリスクが、B社の個別ポートフォリオのリスクより分散されて低くなりそうなものなのに、かえって高くなっているのは、レバレッジをかけているためと考えられる。
  • B社株はインターネットバブル期の1998~2000年に44%も下落したがどのような理由が考えられるか:
    • この時期、ITベンチャーの株価が上昇する一方で、株価純資産倍率や株価収益率の低いバリュー株は値下がりした。B社は割安なバリュー株への投資ウェイトを高くしていたためにこの時期パフォーマンスを落としたと考えられる。
  • B社の上場株ポートフォリオをFF3モデルで回帰分析すると、y切片の推定値は0.055、推定t値は2.60だった。y切片がゼロであるという帰無仮説を有意水準1%で両側検定しなさい。
    > (0.055/2.6)*qnorm(0.995)
    [1] 0.0544887
    • 推定値 0.055 はy切片の本当の値がゼロだったときの上側 99.5% 点よりも大きい → 「0.055と推定される」は1%も起こらない珍しいことなので、帰無仮説は棄却する。
    • これより、B社の上場株ポートフォリオは、FF3モデルで説明できないリターンを上げているといえる。
  • B社の上場株ポートフォリオの、FF3モデルでの回帰分析結果をみると、マーケットファクターのベータが 0.86、サイズファクターのベータが-0.18、バリューファクターのベータが0.3、自由度修正済決定係数は R^2=0.56 になっている。
    • これからわかることは、市場ファクターの低い株のウェイトが高い/中大型株のウェイトが高い/バリュー株のウェイトが高い。
    • 自由度修正済決定係数からみると、FF3モデルへのあてはまりはあまりよくない = (B社の上場株ポートフォリオの収益の源泉はFF3モデルの3ファクターに)分散されていない。
      カッコ内は解答例への補足。「分散されていない」ではわからないと思う。
  • さらに、FF3モデルに「低ベータファクター」「高クオリティ(高収益、安定収益、低レバレッジ)ファクター」なるファクターを追加すると、「低ベータファクター」のベータは有意にプラス、「高クオリティファクター」のベータは高い有意性で大きなプラスだった。
    • 低ベータファクターがプラスなのは、このポートフォリオの市場ベータが0.77と低いことと対応。
    • 高クオリティファクターが大きなプラスなのは、バリューファクターがプラスであったことと合わせて、バリュー株の中でも赤字でない企業の株式を組入れているものと考えられる。
第8問(財務諸表と会計処理)

リース取引ファイナンス・リース取引
(解約不能かつ購入と
 同等の利益とコスト)
所有権移転強制的にオンバランス。
所有権移転外
オペレーティング・リース取引オフバランスでも可。

  • 在外支店、在外子会社の財務諸表項目の換算方法は、
    • 在外支店については、本国主義(在外支店の取引は、本店の外貨建取引)。
    • 在外子会社については、現地主義(在外子会社の事業成果は現地通貨で測定し、それを換算する)。
  • なので、問の、日本にある親会社の外貨建債権の為替メリットは連結損益計算書の為替差益に、海外にある子会社の為替メリットは連結貸借対照表の為替換算調整勘定に計上される。
    • 連結貸借対照表の為替換算調整勘定の増減はP/Lには反映されず、B/Sの株主資本にも反映されず、B/Sの別の区分(その他の包括利益の累計額)に表示される。
第9問(コーポレート・ガバナンスと企業価値


株式会社の機関まとめ
※ 以下の表での「監査役」は、監査役会の構成員ではなく、監査役会非設置会社の監査役と考える。
株主
総会
取締役 取締
役会
会計
参与
会計監査人 監査役 監査役会 監査等
委員会
指名委員会等
(指名委員会、
 監査委員会、
 報酬委員会)
備考 公開会社は
取締役会が
必須。
監査役会設置
会社、委員会
設置会社では
取締役会が
必須。
会計参与は取締役と
共同して計算書類
等を作成する。
会計監査人は会計に
関し外部監査を
行う。委員会設置
会社には必須。
監査役会は3人以上かつ半数
以上が社外取締役
監査等委員会の取締役の過半数
社外取締役
各委員会の取締
役の過半数は
社外取締役
すべての会社
公開会社
※ いずれか必須。
取締役会設置 → 株主総会権限縮小のため、
業務執行から独立した監督が必要になる。
大会社
※ 会計監査人との連動のためいずれか必須。
公開会社かつ大会社
※ いずれか必須。
監査役会設置会社
監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社
小規模な会社の例
中規模な会社の例
上場会社の例
(△:規模による)
東京証券取引所
上場会社の例
(※:上場規程)
〇※ 〇※

  • 依存関係:
    • 会計監査人 → 監査役監査役会/委員会(会計監査人は監査機関と一緒に仕事するから)
    • 監査役会/委員会 → 取締役会(監督側がでっかちだとバランスが悪いから)
    • 監査役 or 監査役会  \nleftrightarrow 委員会(誰が監督するのかわからなくなるから)
  • 粗っぽい捉え方:
    • 公開会社は株主であらゆることを決めて監督するのが非現実的なので取締役会と監査機関が必須になる。
    • 大会社が会計をごまかしたら税金的に弊害が大きいので会計監査人が必須になる。会計監査人は監査機関と一緒に仕事しなければならないので監査機関も必須になる。
    • 公開会社かつ大会社であったら監査機関の仕事がたくさんになるので最低でも監査役会が必須になる。


  • A社とB社は ROA は同じだけど要素分解すると、
    (A社の売上高事業利益率)>(B社の売上高事業利益率)
    (A社の総資産回転率)<(B社の総資産回転率)
    になっている。これは、A社が差別化戦略で販売量よりも質で高いマージンを取ろうとしていること、B社がコストリーダーシップ戦略で大量生産・低マージンを取ろうとしていることと整合的なんじゃないかな。
  •  {\rm ROA} を利払前税引前の事業利益、 {\rm ROE} を利払後税引後の事業利益ベースの利益率と考えると、
    \displaystyle E \cdot {\rm ROE} = (1-T) \cdot \bigl( (E+D) \cdot {\rm ROA} - rD \bigr) \Rightarrow {\rm ROE} = (1-T) \cdot \left( {\rm ROA} + \frac{D}{E} ({\rm ROA} - r) \right)
    より、 {\rm ROA} が負債の借入金利より大きければ、負債比率が大きいほど  {\rm ROE} は高まる。
    • B社の方が  {\rm ROE} が高い理由は、B社の方にのみ有利子負債があるから、は不十分で、 {\rm ROA} > r をいわないといけないらしい。その資金で 2% 以上の利益を上げられないのに 2% で借り入れたらかえって損する、という当たり前の話ではある。
  • A社とB社の企業価値EBITDA比率を求めると以下で、B社の方が高い。
    • 企業価値EBITDA比率の企業価値は、時価総額に負債を指し戻す(ので、PER に比べ資本構成の影響を受けにくい指標になる)。
    • 表に「自己資本(簿価)」があるがつかわない(株価の割安さ、要求収益率の計算には時価をつかう)。

企業価値
(株式時価総額
 + 有利子負債 - 現預金)
EBITDA
(利払前税引前償却前利益)
企業価値EBITDA比率
A社1200100 + 508
B社1080 + 200100 + 508.53

  • 一方、企業価値EBITDA比率と同じく株価の割高/割安さの指標であるPERはA社の方が高い。
    • 当期純利益がすべて配当され、配当成長率がゼロであるとすると、PER は自己資本コストの逆数になる。A社の方がPERが高い=B社の方が株主の要求収益率が高い(B社に財務リスクがあることに対応)。

株式時価総額
企業価値
 - 有利子負債 + 現預金)
当期純利益PER
A社12006020
B社108057.618.75

  • 負債をもつ企業のレバード・ベータ  \beta_L は負債をもたない場合のアンレバード・ベータ \beta_U に比べて以下のように増大する。
     \displaystyle \beta_L = \left( 1 + (1-T) \frac{D}{E} \right) \beta_U
    • 解釈としては、負債部分にも自己資本と同じ収益率を求めるなら単に  1 + D/E 倍になるが、節税効果の分減免されるイメージ。
  • C社の加重平均資本コストは、以下のように書けば負債と時価総額がなくてもそれらの比   D/E で出せる。
     \displaystyle R_W = \frac{E}{E+D}R_E + \frac{D}{E+D} (1-T) R_D = \frac{1}{1+D/E}R_E + \frac{D/E}{1+D/E} (1-T) R_D
    • C社の加重平均資本コストがA社やB社より高い理由は「新興」企業なのでビジネスリスクが高いから。
  • 企業価値評価の問題: フリーキャッシュフロー  C が定率 g で成長するので、以下の式で計算する。
     \displaystyle PV=\sum_{t=1}^{\infty}\frac{Cg^{t-1}}{(1+R_E)^t}